続・闇色のシンデレラ

「……嫌な夢を見たの?」

「いや……」



流れ出た汗を手のひらで拭う俺にごく自然に話しかけてくる女。


仮にも命を狙った俺の前に、再び現れるとは思ってもみなかった。


それとも俺なんか、恐るるに足らない存在なのか。



「そう、でもすごい汗ね」



いろいろと考えていたら、そいつは俺に触れようと手を伸ばしてきた。



「……触るな!」



思わず声を荒らげた。


俺は自分の領域に踏み込まれることを怖がっていた。



「何もしない。あなたを傷つけようとする者はここにいない」

「……」

「喉乾いたでしょ、お水持ってくるね」



こんな利用価値もない俺を、なんでこいつは助けたんだ。


潰れた神木会の残党を生かしておいたって利益はない。


俺もみじめなだけなのに。



「あ……」

「なに?」

「なんでもない……」



その理由さえ聞けない俺は臆病ものだ。


あのときも、今も、声をかけたら何か変わったんだろうか。


今しかないというタイミングで聞き逃してしまうのは、夢も現実も同じだった。