SIDE 凛太朗
『凛太朗、ちょっと来てくれないか』
死んだはずの兄貴の呼ぶ声がする。
玄関で俺を手招きしている兄貴がいる。
『なんだよ兄ちゃん、急に改まって』
『いや、凛の顔ちゃんと見ておこうと思ってさ』
『は?死ぬ間際みたいなこと言うなよ』
俺は分かっていた。
これが夢だということも、これが最後の会話だったということも。
『……』
『兄ちゃん?』
『……なんでもない。行ってくる』
なんでもないと言ったあの顔が、暗く影っていたことも。
……俺はどうしたら良かったんだろう。
このとき俺が何か声をかけたら変わったんだろうか。
何も出来なかった自分への後悔と迷いとまぜこぜになって、今もこの悪夢から抜け出せずにいる。
「凛太朗」
ただ、この日はいつもと違っていた。



