続・闇色のシンデレラ

「え、志勇……?どうしたの」



平常を装って、密着した胸から離れる素振りを見せる壱華。


『傷ついていないふり』を突き通すつもりか。




「言葉の通りだ」

「わたし、無理なんてしてないよ」

「だったらなぜ殺そうと近づいてきた人物を、自分が傷つくのを承知で裁こうと試みた?」




腹に守るべきものができたせいか、壱華は神経が鋭くなり気が強くなった。

少々のことには物怖じしない。





「だって、あの子はまだ子どもよ。
染めようと思えば何色にでも染まる」



だからこんな大胆な発言もすました顔で言ってのける。

それは人としての慈悲ではなく、極道の一端(いっぱし)としての策略。




「ああいう感情的になる人間ほど実直で扱いやすい。
弱みにつけこめば尚更ね。
今からでも荒瀬に従事するよう躾られる。何も試さず捨てるのはもったいない」



壱華は表情から真実を読取られないよう、自然な動作で景色を見るかのごとく、窓辺に移動する


そうやって俺すら欺こうとする賢さに舌を巻く。


誰があの弱々しい悲劇の少女から、この凛々しい極道の妻を想像出来ただろうか。


それは荒瀬が理想とする姐の人物像そのもの。



「なるほど、お前は人をよく見ている。けどな……」



だが、それはお前じゃない。



「せめて、俺の前では気張ろうとするな」