続・闇色のシンデレラ

車は右の後輪をパンクさせながらもなんとか地下の駐車場に入る。


その直前、組員がぞろぞろと出てくるのが見えた。


どうやら犯人は近くに潜んでいたらしい。




「動くなっ、撃つぞ!」




開けたままの窓の隙間から犯人らしき人物の声が入り込む。


興奮した甲高い声は───女?


これが犯人の声であるとすれば、荒瀬組に余程の恨みがあってのことだろう。


そしてもし標的がわたしであるなら、必然的に予測されるのはあの姉妹か継母か。


するとこれまでの悪夢が脳裏をよぎって冷たい汗が背中を伝う。




「……若、ちょいと様子を見てきます」

「分かった。……また撃たれるなんてヘマすんなよ」

「へい、重々承知してます」




するとエンジンをかけたまま剛さんが出て行ってしまい、2人きりになった車内。


わずかに空いている窓からはドスのきいた声と犯人の声が交わって、頭の内側を強く刺激する。


閉めればいい話なのに体がいうことを聞かなくて、それに気がついた志勇が窓を閉めてくれた。





「……大丈夫だ、壱華」



おでこをこつんと合わせて、わたしが安心する言葉で心を落ち着かせようと促す志勇。



「俺の目を見て、ゆっくり呼吸しろ」



次に指でわたしの顎先に触れて顔を上げ、真っ黒の美しい瞳で誘導する。


その色彩は不思議とわたしの呼吸を整えさせた。




「大丈夫か?」



力なく頷くと、シートにパタリと汗が落ちる。


お腹を守っていた手のひらも汗でびっしょりだった。


……それほどまでにあの音がトラウマになっていたとは。


だけど記憶に焼き付けているからこそ感づいたことがある。


これはわたし達を襲った犯人が闇に葬られてしまう前に伝えなくてはいけない。