「え?」



志勇はニヤ、と笑い顔を近づけてきた。


思わず目を瞑る。志勇のにおいが鼻腔をくすぐって彼の手がわたしの肩に触れる。


すがりつくようにその腕を掴むと、キスをされた。


長い長い、吸いつくような甘いキスを鎖骨の上に。


……待てよ。痛くないけどこんなに吸われたら───




「ちょっと志勇、離れて!」

「あ?」



焦って目を開け携帯を取り出し、カメラ機能を使って鏡替わりにする。


画面には案の定、うっすらピンク色のキスマークが映ってる。




「あー!最低っ、こんな目立つところに!」

「無抵抗な壱華が悪い」

「……」



いじわるな志勇を無視してまじまじ痕を観察。


これはタートルネックでも着ない限り隠しきれない。


でもそんな時間ないし、とこれからの予定を思い出しているところ、トントン、扉が叩かれた。