「……頭じゃ分かってる。けど……」



唇を離した志勇は苦い顔をした。


……やっぱり嫌なんたろうな。わたしが本家に帰ること。


前々から、つわりが治まったら本家に戻るっていう条件で事務所に越してきた。


ずっと続いたらどうしようと不安だったけど、4ヶ月に入る目前に徐々に収まってきた。


そのためもう来週には帰ろうかと話を持ち出したら、志勇はへそを曲げてしまったのだ。




「けど?」

「お前を抱けない分、触ってねえと落ち着かねえんだよ」



そういうとデスクチェアを回転させて、彼の脚の間に呼び寄せられた。


座ったまま手を伸ばしわたしの腰を抱き、前かがみになって顔をうずめる。


こうするとちょうどわたしのお腹の位置が志勇の頭と同じ高さになるから、志勇が赤ちゃんごとわたしを抱きしめているみたい。


この瞬間、すごく好き。


ぬくもりから愛されてるって感じて、お腹の子に愛情を注ぐ志勇を見ることが好き。


それにこの体勢だと志勇の頭をなでることができるからとても新鮮。



「そういうのって、触れ合ってる方が気持ちが抑えられなくなるんじゃないの?」

「どうだろうな。とりあえずお前が傍にいると癒される」



少し大きくなったお腹を撫でられてそんなこと言われたら、さっきの天邪鬼な態度も大目に見てしまう。


単純だな、わたしって。



「わっ……」



あたたかな心の微笑みが零れる。


すると急に立ち上がった志勇に抱き上げられ、机上に座らされた。



「癒されて、すっげえ好きだって感じて、それから……困らせたくなる」