続・闇色のシンデレラ

挨拶上の会話は途切れ、これから2人はそそくさと退室するものだと思っていた。



「あの」



かと思えば、理叶は俺の目をまっすぐ見て声を響かせる。



「壱華は最近どうですか?」



……まさか自分からその話題を引っ張ってくるとは。


さてはこいつ、西で彼女と何かあったな。


以前より垢抜けてやがる。




「ああ、昨日の内に、事務所への引越しが完了した」

「つわりがひどいって聞いたんですが」

「よく知ってんな~。けど割と大丈夫みたいだよ。
その証拠に昨日もいちゃいちゃしてるの見せつけられてさ」



そんな理叶にむしゃくしゃしてしまったのは、俺と違って葛藤を乗り越えて進み始めたからなのか。


不意にこちら側に引き戻してやりたくなった。


俺の中に流れる荒瀬の冷血は、誰かの怯えて悲痛に歪む顔を見たがっていた。



「ゲッ、あいつ事務所でも壱華に甘えてんの?」



そこにちょうどよくノってきた涼。




「そうそう、組員の前でハグにキスなんて日常茶飯事。耐えかねて場をわきまえろよってツッコんだら、なんて答えが返ってきたと思う?
『壱華を愛でた方がお腹の子の発育にいい。だからいつ何時も甘やかしてんだ』だってさ!
甘えたいのはお前だろ!」

「溜め込んでるのね、颯馬……」

「ああ、もう爆発寸前だ」



これ見よがしにとまくし立て更に拍車をかける。


知らないところで気にかけていた女が幸せに暮らしているのを耳にするのはどうだ?


まったく俺もひねくれてると思うが、一度発言したものは取り消せない。


さあ、どう出る。潮崎の若頭よ。