続・闇色のシンデレラ

「お父さん!」



振り返ると応接間の出入り口にいた男性。


熊のような体格、整えられた顎髭に、つぶらな瞳は穏やかな光を放っている。


この人は荒瀬組最高顧問、潮崎組の組長。つまり涼の父親。



「おやっさん、お邪魔してます」



立ち上がって挨拶をすると、「そんな固くならなくていい」と彼は笑った




「颯馬、今日は非番か?ゆっくりしていきなさい」

「はい、ありがとうございます。そのつもりです」



悠長に喋る潮崎のオヤジに懐かしさを覚えた。


普段は朴訥な男だが、俺に向ける、目もとにシワを刻ませた陽だまりのようなあたたかい笑顔は何ひとつ変わってない。



「それにしてもおやっさん、か。
……またお義父さん、なんて呼んでくれてもいいんだが」

「はあ?お父さん変なこと言わないで!」



笑って冗談を言って、扉の奥に消えたその人に、再度頭を下げる。


その変わらぬぬくもりが俺を罪悪感の海に突き落とした。


これはまだ涼を想っているという証拠なのか。


何を隠そう、俺と涼は3年前まで肉体関係にあった仲だ。


否、身体だけじゃない。心も通わせていた───と少なくとも俺はそう思っている。