「そういえば、颯馬は結婚はまだだったな」

「今のところはするつもりも相手もいません。
我々にとって結婚とはリスクでしかありませんので」

「そうか、それは残念だ。うちの佳歩を勧めようと思ったが」

「ご冗談を。私などにはたいへんもったいない女性です」



ところで水尾の組長さん。あんたの目は腐ってんのか?


いや、娘以外の人の見立ては確かにある人間だ。しかしこの性格ブスを勧めているとかかなりの盲目だな。


何かに突出した者は何かに欠けてしまうというが、この男は子育てに関するノウハウが欠け落ちてしまったみたいだ。


これでは水尾の先が思いやられる。


ふと熱視線に気がついてカホとかいう女を見た。


上目遣いで俺を見るその瞳は濁っていて、欲にまみれた汚い視線を向けてくる。


……はあ、壱華ちゃんと大違いだ。



そんな地獄の時間は小一時間どころかその倍は続き、服やら鼻にその女の臭いがついて、その日は最悪な1日となった。