もれなく嗚咽が再開する。


けれどもう、吐き出してしまおう。このどうしようもない想いの塊を。



「そばに、いて……ほしいの。志勇がいれば……何も、いらないの……!」




本当にわたしの願いはそれだけだった。



「志勇がいない、昼間が、その時間が……すごく辛い」



大きな幸せを手にした分、空白の時間は苦痛で。



「ひとりに、しないで。もっと一緒にいたい」



おこがましいことにそう考えるようになってしまった。


ああ、なんでどんどん欲が深くなるんだろう。


こんなこと言ったって志勇が困るだけなのに。







「やっと白状したな、壱華」

「へ……?」



ところが志勇はわたしの顎を指先で持ち上げると、してやったりと笑顔になった。


一方のわたしは訳が分からず間抜けた声を出すだけ。




「だったら明日から事務所に来るか?
ここよりは住みにくいかもしれねえが、俺といる時間が増えるだろ」

「いいの?そんなの迷惑に……」

「だから、迷惑じゃねえって。俺だって辛いのは同じなんだから」

「じゃあ、なんで……」



辛いのは同じ?


はっきりそう言われて顔を上げると、志勇の手が頭に置かれる。



「俺から事務所に来いって言ったら来たか?
どうせそうやって迷惑になるって断ったろ」

「あ……」



頭を撫でながら、わたしの心理に的中させた志勇。



「お前は俺を頑固なんて言うが、壱華も壱華で結構な石頭だからな」



そうやって泣きじゃくるわたしをなだめる彼には、この先一生敵わない、そんな気がした。