side 凛太郎



「なるほど、極山の残党が絡んでたんすね」



あれから1週間、俺の心配事がひとつ消えてほっと息をついていた。



「どこまでもヤクザって感じだなぁ極山も。
お前も疑われて気分悪かっただろ、よかったな解決して」

「はい、ありがとうございます」



荒瀬にカチコミをかけたのが散ったはずの極山の残党だと分かって神木会への疑いが晴れた。

その報告をたまたま廊下ですれ違った紫音さんから受けて安心していたら、後ろから誰かが歩いてくる気配がした。



「おはよう凛太郎」

「あ……おはようございます、琴音さん」



現れたのは琴音さん。淡い色のワンピースを来てきちんとメイクをしている。

どっか出かけんのかなと思ったら彼女は俺を見て微笑んだ。




「ねえ、今日連れて行って欲しい場所があるんだけど時間ある?」

「ああ、友達と?いいですよ、車出します」

「ううん、違うよ。凛太郎とデートするの」



にっこりと微笑んだ彼女の言葉を理解するのに数秒かかった。



「…………は?」

「……あぁん?」



デート?何言ってんだ?そう考える前にシスコンの紫音さんにガンを飛ばされた。

ひいっ……またかよ勘弁してくれ。



「凛太郎が好きに生きたらいいって言ってくれたから、そうすることにした。
今日は凛太郎とデートしたい気分なの」

「……は、はぁ!!?」

「おい、くぉら凛太郎。どういうことだぁ?んん〜?」

「ねえお兄ちゃん、なんでそんな怖い顔するの?凛太郎は私のお気に入りなんだからそんなことしないで」

「お、お気に入り!?何言ってんだ琴音」



紫音さんの同様と琴音さんの清々しいくらいの変わりっぷり。

俺は思わず笑ってしまった。



「何笑ってんだ凛太郎」

「……素直な琴音さんの方が好きだなと思って」



そう伝えると琴音さんははにかんだ。

いつもの遠慮した笑みじゃなくて、本当に楽しそうなその表情。

初めて見た彼女の本当の笑顔は眩しかった。