いい大人が涙をこぼしてなんてみっともないんだろう。

涙を拭おうと目をこすったらその手を強く握られた。



「目をこすったらダメだって」

「だ、だって、こんなみっともない…ところ……」



年下の男の子に全て見透かされて、ボロが出た私は為す術もなく泣きじゃくって。

違う、こんな大人になりたかったんじゃない。

本当は、本当は私は───



「琴音さんは頑張ってるよ」



ふと目の前が暗くなり、暖かい感覚が私を包む。

凛太郎に抱きしめられたんだと分かって固まった。

彼の匂いが鼻腔をくすぐる。それはとても落ち着く匂いだった。



「優しい人ってみんなそうなんだよ、他人の目を気にして自分を追い詰めてしまう。
そうなる前に今まで我慢してた分ここで泣けばいいよ。
だから……琴音さんは兄ちゃんみたいにならないで」



泣きそうな優しい声とぬくもりが心に染みて苦しくなった。

凛太郎の心の傷に触れた気がして胸が痛い。



「気が済むまで泣いたらさ、もっと自由に生きよう。
誰も琴音さんのこと責めたりしないから……大丈夫、大丈夫だよ」



大丈夫だと力強く抱きしめてくれる凛太郎。

心を動かされ、私はついに胸の中でわだかまる想いを吐き出した。