猛烈な吐き気を感じ、トイレの扉も閉めないで吐いてしまった。


相変わらず水しか出ないのにどうして治まらないんだろう。


それに今日は点滴したから大丈夫と思って窓を開けたのに。


油断したな。少し反省してトイレの水を流す。


吐いた後は倦怠感に襲われるから、浅い呼吸を継ぎながらぐったり座り込んでいた。



目を閉じると聞こえるのは、自分の息と、水の流れる音と、徐々に距離を縮める志勇の足音。




「……来ないで」



彼はその忠告を聞こえないふりをした。


代わりに後ろにかがんで、口を開かず背中をさする。



「もう、大丈夫だから」

「嘘つけ、震えてる」



わたしを落ち着かせようと背を上下する大きな手。


その手が優しくて、もっともっと触れていてほしくて。



「っ……ふっ」



気がつけば涙がこぼれ落ちていた。



「どうした、まだ気持ち悪いか?」



違うと首を振る。そしたら涙がぽろぽろと溢れたから両手でそれを拭った。


それでも涙は止まらず、嗚咽も絡んで苦しいから顔を覆う。


そんなわたしを志勇は後ろから抱き上げ、一旦立ち上がらせてからわたしを横抱きにした。


志勇のにおいで胸がいっぱいになって、愛しすぎて苦しくなって、その肩にしっかりと掴まって耐えていた。