「琴音さん、入りますね」
部屋に入ると琴音さんはベッドにうつぶせになって泣いていた。
顔は見えないけど、嗚咽で肩が時折揺れているのが確認できた。
「紫音さんに言伝を受けて買ってきましたよ。あなたの好きなスイーツ」
「……来ない、で」
部屋に入った途端、小さい声でそう言ってきた琴音さん。
「また泣いてるんですか?今度はなんです?」
そう尋ねる自分の声はひどく淡々としていた。
隠しきれない嫌悪感が声にでてしまっている。
それにさっき疑いをかけられてイライラしてのもあると思う。
「……なんでもない」
琴音さんはしばらくの沈黙の後ぼそりと呟いた。
頑なに本音を隠そうとする姿──それが死んだ兄貴と重なった。
……やめてくれ、俺はもう乗り越えたんだ。
「またそうやって自分の殻に閉じこもってさぁ……そんなんだからいつまで経っても先に進めないんだろ?」
「っ……だから、なんでもないってば……」
俺でよかったら頼って、なんて言ったくせにどんどん追い詰めてしまうような口調になってしまう。
その日はどうも感情のコントロールができなかった。



