「凛太郎、今日はありがとう。おかげで楽しかったよ」



数時間後、友達と遊んで帰ってきた琴音さんが俺の部屋を覗いた。



「あぁ、いえいえ。あれくらいならいつでも……って、何持ってるんです?」

「今日のお礼、早いうちがいいかと思って」



おずおずと入ってきた琴音さんが持っていたのはティーセット。

「いいですよお礼なんて!」と慌てる俺を差し置いて、琴音さんはハシゴをのぼり、ティーカップと買ってきたシュークリームを机の上に並べた。

若頭の紫音さんに認められているとは言え、まだまだ下っ端の俺は屋根裏部屋に仮住まい。

ほぼ物置の空間でアフタヌーンティーだなんて、とても不釣り合いに感じた。

だけど琴音さんはなんだか嬉しそうだ。



「そんな気を使ってもらわなくてもよかったのに」



思わずポロッと零れた本音に「気持ち程度だから」と眉を下げて笑う。

……正直、マジでやめてほしい。こちとら恋愛経験0のガキだってのに、勘違いしてしまう。

けど断りきれなくて、ふたりでいろいろ話しながら30分ほど一緒に過ごした。