続・闇色のシンデレラ

「けどたぶん、シンデレラなんて現れなければあいつと結ばれただろうよ」



皮肉を込めて壱華さんを「シンデレラ」と呼ぶその顔は笑っている。

だけど今度はその目の奥に強い怒りを感じた。

俺は何も言えずただその場に立ち尽くしていた。



「物心ついた時からずっと恋焦がれていた男をぽっと出の女に奪われりゃ、自暴自棄にもなるよな。
しかもその女は自分の存在を何も知らず、むしろ命の恩人だなんて思ってるんだぜ?反吐が出る。
───俺ですらこう思うんだ。琴音はさぞ悔しいだろうよ。
その絶望は計り知れない」



俺はそんなことも知らず、ただ興味本位に琴音さんを傷つけてしまったんだ。

デリカシーの欠けた自分の行動を悔いた。



「凛太郎」

「……はい」


うつむいて唇を噛む俺を見て優しい声音で語りかけてきた紫音さん。



「だけどさ、優しさだけじゃ人は救えない。
それはお前もよく知ってるだろ?」

「……はい」

「“同じ痛み”を持つお前なら、琴音の心の傷も癒せるんじゃねえかと勝手に思ってんだ。
どんな結果に転ぼうが、俺はお前を恨まないよ」



彼は同じ痛み───シンデレラを憎んでいた過去のある俺に琴音さんを託すつもりなんだ。

その覚悟を受け取り、深く頭を下げて部屋を出た。