それから月日は飛ぶように過ぎ、本家を出てから1年が経った。
俺は19になって日々精神をすり減らしながらヤクザのシノギを覚えていった。
網谷は荒瀬組の中で警察的立ち位置にいる。裏切り者には有無を言わせず制裁を加える組織だ。
極道のシノギを理解して、網谷会の連中の容赦のなさに慣れてきた。
ただひとつだけ、網谷にいて慣れないことがある。
「おはようございます、琴音さん」
「おはよう凛太郎」
それがこの人、若頭の妹の琴音さん。
黒髪が似合うスッゲー美人。たぶんヤクザの娘じゃなかったら女優とかになってると思う。
で、どっか壱華さんと雰囲気が似ている気がする。
だけど似て非なるというか、壱華さんと違って近寄り難い感じの女性。
隙がなくて聖人君子みたいな彼女が俺はどうも苦手だった。
「朝早くから偉いね」
「いいえ、本家にいたころは毎朝4時半には起きてたので楽勝ですよ。
というか、琴音さんも早いですね」
「うん……」
玄関掃除をしている俺を労う彼女。
いつも無理やり笑顔を作ってるけど、その日はちょっと落ち込んでいるように見えた。



