幸いにも双子の妊娠時はつわりがそこまでひどくなくて、悠々自適なマタニティライフを送っていた。

その日はお母さんに部屋に呼ばれて、志勇の小さい時のアルバムを見せてくれると言うので片っ端から漁っていた。



「きーくん、ここまでおいで」

「……だあ!」

「あら上手!すごいねぇ、きーくん天才!」



その間お母さんは絆を見てくれている。

絆はヨタヨタと歩きながらお母さんの胸に飛び込んだ。

絆はきゃっきゃと笑って幸せそう。

さすが2児の母、あやし方も上手だ。



「絆ってほんっとかわいいなあ、あたしも子ども欲しい〜」



そういうのは、たまたま本家にお母さんの髪を切りに居合わせた涼。

美容師である彼女はこうやって休みを利用して本家に出張美容室を開いていたりする。



「涼ちゃん、若いうちに産んでおかないと体力持たないわよ。特に颯馬は苦労した〜」

「アッハッハ、それでもあたしほどじゃないと思いますよ。お母さん酔ったら未だに私の赤ちゃん時代愚痴りますもん」

「涼ちゃんも凄かったわよねぇ、なにせ3歳で壁よじ登って屋根に登って組員を震撼させたからね」

「え、この写真?」



たまたま開いたページに、屋根を指さして泣く幼い頃の颯馬と、屋根のてっぺんで仁王立ちする女の子を見つけた。

もしかして、この絵に書いたようなおてんばが涼?



「嘘、写真に残ってるの!?最悪なんだけど」

「あ、それ私が撮ったの〜。危機的な状況なのに笑いが止まらなくって」



ぶっちゃけ、幼子がこんなことをしてたらわたしは顔が真っ青になると思うけど、笑いながら写真を撮ったというのだからお母さんは間違いなく「極道の妻」だ。