壱華は俺と目を合わせ、はにかむ。

じんわりと心を満たして行くその笑顔が、俺だけに見せるものだと思うとこれほどまでの幸せはない。



「壱華」

「ん?」

「幸せにするからな」



先の見えぬ未来を誓う俺の姿は、お前の目にはどう映っているのだろう。

綺麗事では切り抜けないこの世でも、お前の前ではそれを実現したいと切実に思う。



「あなたに出会えた時点でわたしは幸せ者だったよ」



数秒のうち間を取り、そう答えた壱華。

俺はそんな健気な娘の手を取りそして唇にキスをした。

そんなわずかなスキンシップで一層笑みを深めるその姿に「それは俺の方だ」と笑いかけた。

幸せな時間がゆっくりと流れて行く。

いつまでも続くように思えたこの生活も、それほど長くは続かなかった。









出産の兆候が現れたのはそれから3週間後のことだ。