司水さんを探して歩き回っていると、厨房あたりで2人の男が、書類のようなものを手に話し合っているのをみかけた。



「ビックリしましたよ、若の名前だったんで」

「見てしまいましたね、力。これが志勇に知られたらあなた本家にいられなくなるかもしれませんね」

「ええっ、そんな怖いこと言わないでくださいよ!
若宛の郵便ってだけで、俺は何も見てないですからね!」



力さんと司水さんだ。慌てる力さんは近づくわたしに目もくれず厨房へ入った。

なんの話をしていたんだろう。



「ああ、壱華さん。こちらにいらしたんですね」

「あの、わたしに話があるって聞いたんですけど」

「はい、若が帰ったら壱華さんと買い物に行きたいそうで。
このカタログを見せて欲しいと言われまして」

「志勇が?珍しいですね」



私に気づいて話しかけてきた司水さんは、話の話題だった書類らしきものを差し出した。

それは中身が透けるようなピンクのビニール袋に入っていて、内容物と見られる雑誌の表題は───




「ベビーグッズ……」




「ええ、そろそろ揃えた方がいいかと相談を受けまして。
とりあえず若の名前で専門店から取り寄せました」

「ふふふっ……」

「壱華さん?」

「し、志勇が、これを見て真剣な顔で悩んでいたんだと想像したら……笑えて来ちゃって」

「……楽しみには用意周到ですからね、あの男は。
子供の頃なんて、廊下にローションを流して組員を滑らせたり、本家を数百本のバラの花で飾ってみたり、やりたい放題でした。
寝起きドッキリだといって、室内で打ち上げ花火をしてオヤジに怒られていたのは懐かしいですね」

「ふっ、ふふぅ……」



突然司水さんの持ちネタ『志勇の黒歴史』を暴露され変な笑いが出た。

はちゃめちゃすぎるよ志勇。



「まだお聞きになります?」

「も、もう……結構です、笑いすぎて……苦しい」