「ごめん……俺、こんな……迷惑かけるつもりじゃ……」

「泣いていいよ、ここには光冴とわたししかいないから」

「……そんなこと言ったら、余計……泣く、じゃんか……うぅ……」



光冴は声を必死に抑えて泣きじゃくった。

きっと光冴自身もこんなに自分の心が追い詰められていたとは思っていなかったはずだ。

わたしも志勇と出会う前は、心の重荷は我慢することしか知らなかったから。








「スッキリした?」

「明日絶対目が腫れる……絶対理叶につっこまれる」

「ふふっ」



5分くらい過ぎただろうか、そう言うといつもの光冴らしい返答をした。



「……ごめんね、壱華ちゃん、改めて。
本当に申し訳ないことをした」

「それ、今ならわたしが許してくれると思って言ってる?」

「違うよ!俺は……」

「分かってるよ、行こうか」




深く腰を曲げて謝ってきた彼はわたしの言葉を聞いて跳ね上がるように頭を上げた。

しかし光冴はわたしの表情を見つめると一転して安堵を浮かべる。

そしてお互いを見つめ、穏やかに微笑みあった。

最後に目に焼き付けようと見た景色は、見違えるほど美しい色彩に変わっていた気がした。