独りだったわたしに、大切な人とのつながりを教えてくれた、この言葉を名前として贈りたい。




「キズナ……」



呟く志勇の表情は、驚いている。

だけどその声は納得したような含みを持たせていた。



「……どうかな」



そっと訊ねると、志勇はうっすらと笑い、わたしの頭に手を置いた。



「お前らしいな、壱華」



それは彼なりの褒め言葉だった。

髪に指を絡ませ優しくなでながら、美しい笑みを浮かべている。



「いい名前だ」



彼はわたしの目を見て再度笑った。

わたしはたおやかな気持ちで笑みを返した。


清々しい晴天の日、わたしたちの子に名をさずけた日。

この穏やかな空間を忘れることは無いだろう。

そう思えた、出産予定日を4ヶ月後に控えていた頃のことだった。