その日、わたしはお母さんのもとを訪れていた。

いろいろ談笑をした後、話題は子どもの名前について、に移った。



「でね、冬磨ったら、子どもができたなんていったら大慌てで。
俺が名前を決める、って張り切ってたの」



数週間前と変わり、お母さんの表情は、朗らかで優しいものに戻っていた。



「性別が分かってから、丸1ヶ月考え抜いて決まったのが『志勇』。
『志高く勇ましい男になるように』そんな願いを込めて」



そんな彼女に安堵しながら、私は志勇の名前の由来を聞いていた。

志勇って、そんな意味が込められていたのか。



「それから颯馬はね、私が決めたの。
『とうま』の子だから、韻を踏んで『そうま』。字は冬磨が決めたわ」

「なるほど。韻を踏む……それもいいですね」

「ね、親子三代で韻を踏むっていうのもありかもしれないわ」

「確かに、しょうま、こうま、りょうま……まだまだ韻を踏めそう」

「まあ、それはこちらの都合ね。
壱華ちゃんたちがすでに考えてる名前があるなら、そっちの方がきっといいわ」



そう言ってくれるお母さん。実は赤ちゃんの名前は考えてあるんだけど、それをまだ志勇に伝えていない。

なんだか他にいい名前があるような気がして。