「こんなガキに一杯食わされるとは!いやぁ、人は見た目じゃねえな!」

「……はい?」



凛太郎は紫音の豹変ぶりに困り顔を浮かべた。



「お前、歳はいくつだ?18になったらウチに来いよ。網谷の幹部候補として迎え入れてやる」

「はぁ!?」



何となく予想はしていたが、ここに来て紫音が凛太郎を口説き始めた。



「……ヘッドハンティングですか。うちの独占欲の強い若頭が黙ってませんよ」

「え、マジ?あいつが気に入ってんのか。だろうなぁ、伸び代がすげェもんな。
こんな逸材、ほっとくわけがねえよ」



べた褒めの紫音にぽかんとしているのは凛太郎だけではない。妹の琴音もそうだった。



「まあ、まだ15なら時間はたくさんある。3年の間に口説き落としてやるさ。
さて、琴音帰るぞ」

「え?あ……うん」



いきなり立ち上がった紫音に、琴音は煮え切らない顔で腰をあげると最後に凛太郎に向けて微笑んだ。

まっすぐで綺麗な笑みだった。

凛太郎は彼女に見つめられぽっと顔を赤くしてうつむいた。

それを見てまだまだ青いなとひそかに笑った。

開けたふすまの隙間からは、爽やかな風が吹きこんでいた。