凛太郎はどうやら、紫音の本心に勘づいたようだ。

とぐろをまいた蛇のように渦巻く紫音のヤクザとしての考えを見抜いたのだと感じた。

齢15にしてそれが分かるとは───並外れた洞察力に舌を巻いた。



「ああ、なるほど。あなたは口止めのために俺を探していたんですね」



凛太郎は紫音の目をまっすぐ見て断言した。

紫音は目を丸くして凛太郎を見つめ、一方の琴音は何事かと兄の方に首を傾けた。



「安心してください、琴音さんの件は誰にも言いません。
俺にはここで生きていくしか道がない。自ら立場を悪くするようなことはしません」

「……お兄ちゃん、それを危惧して私をここに連れてきたの?
私はただ、お礼を言いたかっただけなのに」



純粋な琴音は兄の裏の考えにショックを受けている。こんな少年を疑うなんて信じられない、と目は語っていた。

……やはり彼女は姐には向いていない。人間の浅はかさを知らない、優しすぎて極道としての選択ができないお嬢様。

カタギの世界ではそれでもいい。

しかしここは日本最大級の暴力団組織の牙城なのだ。



「はっはっは!お前、気に入ったぞ!」



突然、紫音がまた豪快に笑った。

俺を始めその場にいた人間は驚いて紫音に再注目する。

先程の表情と打って変わって、明るく朗らかな笑顔だった。