SIDE 壱華



それからしばらくして、荒瀬組は琉進を除名し、水尾は荒瀬の直参から三下に下ることが決定した。

その出来事は一時マスコミに取り上げられニュースになった。でも大元の荒瀬にはなんら影響はなかった。

私はその知らせを病院のテレビを通じてみていた。

実は元凶になった娘から受けた暴行で背中を4針縫うけがを負い、あばら骨が2本折れていた。

妊娠しているため大事をとって入院をすることになり病院から出たのはパーティーから10日後のこと。

その日は蒸し暑い中、しとしとと雨が降っていた。



「ただいま帰りました」

「おかえりなさい」



玄関にて迎え入れてくれるのはいつもと変わらぬ顔ぶれ。

司水さんが迎えに来てくれていた。

ただ、変わったことといえばここに志勇がいないこと。

今日は遠方に出張になってしまったらしい。



「長い入院生活でお疲れでしょう。ごゆっくりお休みください」

「はい、ありがとうございま…」

「と、言いたいところなのですが姐さんが壱華さんと話がしたいと申しておりまして…」

「そうですか、わかりました。大丈夫ですよ」



残念だと思う心もつかの間、司水さんが申しわけなさそうに苦い顔をした。

そうして私はほっとする間もないまま、金獅子の間に呼ばれたのだ。