「兄貴ってほんっと底意地悪いよ。お気に入りの人間に対する態度じゃねえもん」

「あ?何を分かりきったこと言ってやがる。俺が生涯をかけて優しく接するのは壱華ただひとりだ」

「あー、はいはいそうですか」



通常運転な様子を見ると、若頭は怒ってはいないらしい。

安心した反面、しっかりしないと思ってもう一度若の前まで歩いて、深く頭を下げた。



「あの、勝手なことをしてすみませんでした。壱華さんの顔をひと目見て安心したので、俺は病室の外で待機してます」

「……ありがとね、凛太郎。退院したらすぐ会いに行くから」

「そうか、二度と来んなよ。俺と壱華の時間を邪魔するな」

「……はあ、ひねくれてるなぁ兄貴」



にっこりと笑ってありがとうと言ってくれた壱華さんと、思いっきり威嚇してくる若。それにボヤく颯馬さん。

剛のアニキはいたって冷静に彼らを眺めて「では俺もこれで」と言って病室の出入口の方に向かった。

俺もその後をついていって病室を出た。