SIDE 壱華
動揺を隠せない組長さんは、震える手でお母さんを抱き上げ去っていった。
荒瀬組の中で最も権力を持つ長が席を外した。
それはつまり、この場を治める役目が若頭の志勇に託されたということ。
「連れてまいりました」
網谷兄妹が退室した数分後、現場に現れたのは理叶。
彼は若頭補佐である光冴に、逃げ出したはずの水尾の娘を拘束させていた。
強引に女を連れるその光景はあの日と重なったけど、そこまで怖いと思わなかった。
むしろ今この場で起きた出来事の方が恐ろしい。
そうか。あの日より恐ろしいことが、今ここで起きたんだ。
私はようやく、その恐怖を実感した。と同時に、小刻みな震えが止まらなくなった。
動揺を隠せない組長さんは、震える手でお母さんを抱き上げ去っていった。
荒瀬組の中で最も権力を持つ長が席を外した。
それはつまり、この場を治める役目が若頭の志勇に託されたということ。
「連れてまいりました」
網谷兄妹が退室した数分後、現場に現れたのは理叶。
彼は若頭補佐である光冴に、逃げ出したはずの水尾の娘を拘束させていた。
強引に女を連れるその光景はあの日と重なったけど、そこまで怖いと思わなかった。
むしろ今この場で起きた出来事の方が恐ろしい。
そうか。あの日より恐ろしいことが、今ここで起きたんだ。
私はようやく、その恐怖を実感した。と同時に、小刻みな震えが止まらなくなった。



