「安心してください。
と言っても信じられないでしょうけど……わたしはあなたに危害を加えたりなど致しません」



わたしの奥深くの怯えを感じ取ったのか、彼女は距離をとりそう言った。

彼女は私襲ってきた女と違い、賢明で冷静だった。



「わたしは、網谷琴音(あみやことね)と申します」



深く一礼し名乗る彼女。

網谷一家は確かに聞き覚えのある組織だ。



「網谷一家……?」

「はい、わたしは網谷一家総長の娘です。
以前より龍進会の動向を伺っていました」



網谷一家は幹部で、荒瀬組の顧問に勤めている。

網谷の総長には2人子どもがいることも知っていた。

よって彼女はこちら側の人間なのだろう。

……こんな風に分析しているより、罵倒されたお母さんの精神状態の方が心配だ。



「あ……!」



立ち上がろうとすると、彼女は慌ててわたしに手を差し伸べてきた。