続・闇色のシンデレラ

「やめて……」



お母さんの蚊の鳴くような声が聞こえる。

お母さんは身動きが取れない様子だった。

まるで見えない糸に縛り付けられているかのような……。



「教えてあげる。荒瀬紘香はね、他の組の恨みを買って、可哀想に、この階段から突き落とされたの」



ふと、後ろに立つ女が声を発した。



「え……？」



眼下に広がるは、大きな広間と、長く下へと続く螺旋階段。

ここから、お母さんが落とされた？

そんな話、聞いたことがない。



「階段から突き落とされた彼女は九死に一生を得た。
……あの様子だと、相当のトラウマのようね」



後ろに振り返った彼女は震えて立ちすくむお母さんを見ていやらしく笑う。

徐々に恐怖が沸き上がってきた。



「いや……誰か……」



声を絞り出し、助けを呼ぼうとするも、いつの間にかドアの前に張っていた男たちは逃げ出している。

ケガを負った佳歩と護衛の男たちも、そこにはいなかった。



「志勇……！」

「はっ、都合よくあの人が助けに来ると思ったら大間違いよ！腹の中のガキ共々死ねばいい！」



強い力でグイグイと腕を引っ張られる。

体がじりじりと階段のステップに迫っていく。

どうすることもできない私は最後まで抵抗することしかできなくて、心の中で志勇を思い浮かべ、ごめんなさいと謝る。






しかし、私の運はそこでは尽きなかった。







「可哀想な人……」



鈴がなるような綺麗な声。



「っ！？誰……」




それに驚いた女が振り返った刹那。

私の視界は綺麗な紫色に覆われた。