「なんてことを……やめなさい!あなた、それ以上動くと自分の命が危ないって分かってるの!?」
突然味方側に切りかかった流進の女。
ふと周りを見ると、声を上げたお母さん以外の人間は凍りついている。
この女の行動が理解できないんだ。
「自分の命も何も……流進会はもう終わるから関係ない」
一方の彼女は血のついたナイフを眺めて興味なさげに呟く。
わたしは「え?」と不可解な声をもらした。
「梟がね、教えてくれた。もう流進は終わるって。
パパが海外の麻薬組織に手を出しちゃったのがバレちゃったらしくて」
「梟が教えてくれた……?」
「そうよ、梟が情報を提供してくれた。
で、何、その顔。梟はあんたらの味方じゃない。金さえやれば誰にだって情報を渡す人間なの。
ざーんねん、世の中いい人だらけじゃないのよ?」
信じられなかった。
流進が近々荒瀬組を追放されること。梟が流進側にも情報を回したこと。
「だから、最後にひとついいことを考えちゃって」
そして今、笑う彼女の瞳が憎悪で満たされ、怒りの矛先がわたしに向けられていること。
「やめて!」
お母さんが悲痛な叫びを上げる。
しかしわたしと向き合いナイフの刃先をこっちに向け悪女と化した女は、声を張ってそれを制止する。
「もう20年以上も前の話。ここで起きたことをあんたに再現してもらうの。
同じ会場、同じ部屋、同じ階段でもう一度」
「やめ、て……」
お母さんは苦痛に顔を歪ませるようにして耳を塞いだ。
こんなお母さん……見たことがない。
それはこの場を鎮める者が誰ひとりとしていなくなったことを表していた。
突然味方側に切りかかった流進の女。
ふと周りを見ると、声を上げたお母さん以外の人間は凍りついている。
この女の行動が理解できないんだ。
「自分の命も何も……流進会はもう終わるから関係ない」
一方の彼女は血のついたナイフを眺めて興味なさげに呟く。
わたしは「え?」と不可解な声をもらした。
「梟がね、教えてくれた。もう流進は終わるって。
パパが海外の麻薬組織に手を出しちゃったのがバレちゃったらしくて」
「梟が教えてくれた……?」
「そうよ、梟が情報を提供してくれた。
で、何、その顔。梟はあんたらの味方じゃない。金さえやれば誰にだって情報を渡す人間なの。
ざーんねん、世の中いい人だらけじゃないのよ?」
信じられなかった。
流進が近々荒瀬組を追放されること。梟が流進側にも情報を回したこと。
「だから、最後にひとついいことを考えちゃって」
そして今、笑う彼女の瞳が憎悪で満たされ、怒りの矛先がわたしに向けられていること。
「やめて!」
お母さんが悲痛な叫びを上げる。
しかしわたしと向き合いナイフの刃先をこっちに向け悪女と化した女は、声を張ってそれを制止する。
「もう20年以上も前の話。ここで起きたことをあんたに再現してもらうの。
同じ会場、同じ部屋、同じ階段でもう一度」
「やめ、て……」
お母さんは苦痛に顔を歪ませるようにして耳を塞いだ。
こんなお母さん……見たことがない。
それはこの場を鎮める者が誰ひとりとしていなくなったことを表していた。



