続・闇色のシンデレラ

「痛い……離して!」



わたしを捕まえたのは流進会のお嬢だった。

彼女の長い爪はわたしの二の腕にきつく食いこむ。



「誰が離してやるもんか!やっと機会が廻ってきたってのに!
こいつをあんたと同じ目に合わせない限り離してやらない!」

「っ……!?」



あんた、とお母さんを指さしてヒステリックに叫ぶ女。

お母さんは大きく目を見開き体を震わせた。



「ねえ、やめようよ!これ以上この人に酷いことしたら私達が殺されちゃうって!ねえ!」



その時、わたしの背をドンッと押して間に入った誰か。

水尾組の佳歩という女がどういうわけか、仲裁に入った。



「うるさい!あんたは黙っててよ!」」

「もう十分でしょ!?冷静になったらこんなこと馬鹿げてるって!家族のためにもやめよう?」

「チッ、何怖気付いてんのよ。約立たずが」



仲間割れのせいで拘束から自由になった体。

逃げるチャンスだと足を踏み出す。





「キャアァァ!」




しかし、異変に気がついて足がすくむ。

赤い何かが飛び散った。右側の視界から血しぶきが上がったのだ。

腕を押さえて、ドッとその場に倒れ込むカホ。




「お嬢!」

「佳歩!」




慌ててドア付近で見張りをしていた男のうち2人が彼女に駆け寄る。

彼らは水尾側の人間らしい。



「動かないでよ?シンデレラ」

「っ……」



恐る恐る振り返ると見えたのは、光を反射して鋭く光る、銀色のナイフ。

刃先には佳歩を切り裂いた時付着した真っ赤な血が付いている。



「馬鹿はそっちでしょ?もうここまで来たら最後までやるしかないじゃない。
荒瀬紘香が体験した最悪のシナリオをさ」