続・闇色のシンデレラ

SIDE 壱華



「その子を解放しなさい。今すぐに」



こちらに近づいてくる、低い女性の声。

そのとたん、蹴る殴るの暴行をしていた女たちの手が止まる。

邪魔者が入らないようにと見張っていたはずの男達もその女性を追い出そうとはしない。



「お母さん……」



なぜなら彼女は、そこらの人間が1本も指を触れてはならない存在。

荒瀬組の頂点、組長の妻であるからだ。



「聞こえないのかしら。わたしの大事な娘から離れなさい」



どうしてお母さんがここに……？

痛みが思考をぼんやりと鈍くさせてそれだけしか考えられなかった。



「ねえ、どうしよう。この人が来るなんて……逃げた方が、ねえ！」

「……佳歩、うるさい。あんたのことなんて知らないから」

「え？」



とにかく立ち上がろうと動いたその瞬間に、わたしの腕を掴んで無理に引き戻しされた。

女のうちひとりが、あろうことかお母さんの命令に背いたんだ。