「暗転した数分の間に、颯馬が襲われ、そして壱華様が、何者か攫われました……」
頭を鈍器で殴られたような目眩に襲われる。
それほどの衝撃が俺の中を駆け巡った。
「流進と水尾のお嬢も姿を眩ませて……それから」
「クソ親父!」
俺はいてもたってもいられず席を立った。
司水の言いかけた言葉など耳に入るはずがなかった。
「若!?」
「志勇、おい、待てよ!今、妹から連絡が……」
見かねた直参達がが引き止める。
その中に顔なじみの男の声が聞こえたが、しかし俺が戻るはずがなかった。
会議室を飛び出し廊下に飛び出す。
……間に合うか。
俺の予想が正しければ、壱華を連れ去った場所にひとつだけ、心当たりがある。
あの事件が起こったあの場所を。
「壱華……!」
もしも、壱華がああなれば俺は……。
底なし沼のような恐れを抱きながら、異様に明るい廊下を駆け抜けた。



