続・闇色のシンデレラ

「チッ、邪魔くせえ」



苛立ちが積もって言葉となる。



「志勇?」



すると壱華は憂いを含んだ瞳を俺に向けた。

それっぽちで湧き上がる欲情と、たった今浮かんだ閃き。

ああ、そうか。女どもを黙らせる手っ取り早い方法があった。



「壱華」

「ん?」

「嫌がるなよ」

「なに……んっ」



口を開きかけた壱華に、唇を押し当てる。

不意に壱華の唇を奪い五感を支配した。

驚いて跳ね除けようとする壱華の手と、それを押さえる俺の腕。



「はぁ!?何あれ」

「志勇様……!」



動揺、落胆、それらを含んだ一瞬のざわめきと、甘い甘い感覚。

しばらくして唇を離した俺は壱華にこう言い放つ。



「ああいう面倒な奴らには見せつけるのが一番だ」



そう言うと、さらに紅潮する壱華の頬。



「……そんなこと言って、単にキスする口実にしたかったんでしょ」

「フッ、一理ある」



妻となってなお、子を宿してなお、俺を魅了してやまないシンデレラ。

恥ずかしさを必死に隠そうとするその姿すら愛くるしい。

その瞬間に俺はこちらに向けられる視線に無視を決め込んだ。




怒り、嫉妬、憎しみ、そして悲しみ。

それぞれの感情を宿す瞳から目を背けて。