SIDE 志勇



話の最中、自身を主張するような女の声に、壱華はそちらを見る。

嫁の視線ですら奪われるのが許せない俺は、壱華の瞳に映るものを視て威嚇しようと思った。



「こっち向いた!?ねえ今志勇様、佳歩のこと見たよね?」

「バカ、アタシを見たのよ!志勇様、ご無沙汰しております」



ところがそれは俺を見るなりこれ見よがしにとアピールしてくる。

そこには着飾った若い2人の女が俺を見て騒いでいる。

ご無沙汰?生憎だが誰だかさっぱり分からない。

というか壱華以外の女の情報なんざ興味がねえ。


……興味があるとすれば。



「親父、なぜあれを入れた」

「何の事だ」



それが壱華に危害を加えるか否かという点だ。



「あのどこぞのバカ娘だよ。会場には配偶者以外の女の出席は控えさせるって話だったが」

「知るか。大方勝手についてきたんだろう」



親父は素知らぬフリで口だけを動かす。



「あら、どうしたの冬磨」



しかしおふくろを一瞥すると、感情を隠すかのようにその身体に触れる。

……矛盾してやがる。

親父がおふくろに必要以上に触れる時は大抵、不安を隠すときだ。

決起集会への女の出入りは俺が生まれる前に起こった『おふくろの件』で厳重警備になったはず。

俺も今は壱華という唯一があるから身にしみて分かる。

あれは(むご)い。壱華が同じ目に合うと考えたら俺は耐えきれない。

それともこの金獅子は、当時を彷彿させることだと知っても、何か企んでいるのか。