「壱華、気分が悪くなったらすぐ言えよ」



かと思えば真剣な表情を見せる志勇。

視線はマタニティドレスで隠しきれないほど大きくなったお腹に注がれている。



「うん……ほんとアメとムチが上手ね?」

「甘ったるいだけじゃ物足りねえだろ?特にお前の場合」

「Mって言いたいの?」

「そうだな。お前、自分じゃ否定するけどかなりのマゾ気質だからな」

「自信満々に大勢の前で言わないでくれる?」

「気にするな、どうせお前を堪能出来る男は一生俺しかいねえんだ」

「……もう」



いつものような意地悪な笑みを見せる志勇。

平穏を漂わせた一時の雰囲気は──



「あ、志勇様!」

「きゃあ、出席なさってるのね!」



いつかどこかで聞いたようなあからさまな猫なで声にさえぎられ、亀裂が走った。