お腹に手を当てると、何か違和感を感じた。

消化後のお腹のようにグルグルと動いている。

いや、そうじゃなくて、どう例えればいいんだろうこの感じ……。




「そうじゃないけど、なんだ?」

「うーん……」

「壱華、どうした」



話をそっちのけでお腹を触る私に、志勇が問いかける。



「うーん……あのね、最近お腹が調子がおかしいの」

「おかしい?どんな風に」

「なんて言うかこう……ゴロゴロするじゃなくて、うにゅって動く感じ」



志勇は「うにゅ?」と眉間にシワを寄せオウム返ししてきた。



「……それ、胎動じゃねえのか」

「胎動?まさか、まだ早くない?」

「早くねえだろ。16週で動くのが分かるって話だぞ」

「あら、さすがパパ。物知りね。
そっか~そうだったらママ嬉しいな~」



普段はこうやってからかうような口調を投げると、露骨に嫌がる志勇。

だけど今日はそんな様子はなく、不意に後ろからわたしのお腹に手を回した。



「そろそろ名前、決めねえとな」

「うん、性別が分かったら考えようね」



耳元で囁かれる志勇の優しい声と、わが子を愛でるように撫でる大きな手。



「いや、ある程度決めておいた方がいいだろ」

「そう?もしかして志勇は考えてる?」

「多少な……花にちなんだ名前とか、お前の名前から一文字とるとか」



あ、うん。やっぱりそういう路線で来るか。



「壱華……一輪の華で『輪華』とか、俺とお前から一文字ずつとって『勇壱』とかどうだ」

「……」

「おい、無言で嫌がるのやめろ。分かったから」