続・闇色のシンデレラ

「んー?坊っちゃんもいるじゃない!?久しぶりねえ!」




どこかで見たことがあると思った瞬間、彼女は志勇を見て歓喜の声を上げる。


……坊ちゃん?志勇にそう言ったよね。


対する志勇は口を歪めて「嘘だろ……」と呟く。


あれ、お知り合い?




「やだ、あんたが来るなんて聞いてなかったわよ!
ほら、椅子用意してあげるから座った座った!」



テンション高めの先生は、俊敏な動きでパイプ椅子を用意。


なんだろう、しゃべり方といい、仕草といい、誰かによく似てる。


それにしても───



「……坊っちゃん、早く座りましょう?」

「お前っ、早速悪用すんな!」



人から畏れられる志勇が「坊っちゃん」だって。


わたしはおかしくてくすくす笑った。





「懐かしいわ、もう20年以上も前よ。
急に紘香が産気づいちゃってね。まだ新米だったわたしが赤ちゃんを取り上げたの」

「それが志勇だったんですか?」

「ええ、そうよ。あのとき産湯に入れた赤ん坊が、今やパパになるって?まあ、これ以上の歓びはないわ!」



診察に入る前に詳細を語ってくれた先生。


志勇を取り上げた先生らしいから、色々話を聞きたかったけど、隣に座った志勇はため息をついた。



「……早く診てやってくれ」

「あら~、ごめんなさいね。改めまして、産婦人科医の潮崎です」

「あっ!」



自己紹介され、思わず上ずった声が出る。


潮崎という名字をすべてがつながった。


この人、涼にそっくりなんだ。