玲奈は医学書から顔を上げる。いつものように冷たい顔なのだと透は思ったが、一瞬だけ見えたのはどこか憂いを含んだものだった。

「私は、寄生虫学者だ。探偵でも警察でもない。私は事件に関係した寄生虫や毒について刑事に教えるため、そしてどのように事件が起きたのか興味があるから調べる。犯人はどうでもいい」

犯人はどうでもいい、その言葉に透はムッとした。頭に浮かんだのは病院で苦しむ子どもたちだ。気がつけば、透は玲奈の頰を叩いていた。

「お前、人として終わってるだろ!!あんなに子どもたちが苦しんでいたのに!!」

「……感情に振り回されるのだけはごめんだ」

叩かれたというのに、玲奈は顔色を変えない。それにますます苛立ち、透は部屋を出て行った。

その様子を、美咲は黙って眺めていた。