「残してありますが、口にしないでくださいね?」

村橋の母親がそう言い、竜田揚げの入った皿を持って来る。透と玲奈は同時に皿の中を覗き込んだ。見ただけでは普通の竜田揚げだ。

玲奈がもらった箸を竜田揚げに刺してゆっくり広げていく。そして、竜田揚げの中身を見て玲奈の目は鋭くなった。透も「えっ……」と呟いた。

「竜田揚げ……中にしっかり火が通ってない」

竜田揚げの断面は、火が通っていないことを示すピンク色をしていた。村橋の母親をはじめ調理師たちは申し訳なさそうな顔をしている。

「しっかり火が通っていなかったから、アニサキス症になったのね」

「しっかり火を通したつもりだったのですが……」

その後は、調理師たちから一人一人話を聞いて研究所に帰ることになった。



研究所に帰った後、美咲がすぐに夕食の支度をした。テーブルの上にはすぐに味噌汁やおかずなどが並べられる。

「玲奈、ご飯少しでもいいから食べて」

何か作業をしようとしている玲奈に美咲が素早く声をかけ、椅子に座らせる。透は三人のお茶などを用意した。