膨大な医学書が並べられた棚、実験器具が並べられた机、柔らかなベッドが置かれた部屋。その人物は、ノートにまた言葉を綴る。

『日本の警察には呆れた。日本の司法も、警察も、法医学も、全てがおかしい。海外を見習え。日本が平和な国だと?ならばなぜSたちの事件を事件ととらえない?』

この人物が、警察への落胆をノートに綴るのは初めてではない。ページを戻れば同じような言葉が何度も書かれている。

「……」

その人物はため息をつくこともなく、部屋に持って来ていたワインを開ける。血のような赤ワインではなく白ワイン。グラスに注いだ白ワインを、その人物は一気に飲み干した。

『俺、白ワインの方が好きなんだ』

過去のことが頭に蘇り、その人物はゆっくりと目を閉じた。