すると、ようやく女性も透を見た。そしてゆっくり口を開く。

「Yo se.(スペイン語で知ってるわ)Kunlin kaiken assistenttini.(フィンランド語で全部助手から聞いた)Schon dich kennezulernen.(ドイツ語で初めまして)Tran trong(ベトナム語でよろしく)」

女性の口から飛び出した言葉に、透は目を点にする。何を言っているのかさっぱりわからない。英語なら多少はわかるが、どの言葉も理解できなかった。英語でないことは確かだ。

「す、すみません……。何を仰ったのか……」

透がそう言うと、クスクスと女性と美咲は同時に笑い出す。美咲が「こう言ったのよ」と教えてくれた。

「そ、そんな意味だったんですね」

「私と美咲は外国語を覚えるのが好きだからな」

女性は椅子から立ち上がり、スッと透の前に手を差し出す。

「改めて、初めまして。私は宍戸玲奈(ししどれいな)。寄生虫と毒について研究している。君の仕事は私の助手だ」

「寄生虫!?よ、よろしくお願いします……」