「吹雪さんに会いたいな…………」


 周は薄暗くなった空を見上げてそう呟いた。廊下からは、ビルの狭間の空が見える。そこから少しずつ星が見え始めている。

 本当ならば、夜中でも朝まででも待っていたかった。
 けれど、そんな事をしてもダメだともわかっていた。吹雪に、ただ会うだけではダメだと。
 今の自分では、きっと彼女に相応しくないだろうと。


 月が見え始め、人々が仕事や学校を終えて自宅へ帰り始める時間。
 周は、ついにその場から離れた。


 『今日は帰ります。また、吹雪さんに会いにくるから。………本当にごめんなさい』

 
 そんなメッセージを吹雪に送り、周は温かく心地のいい彼女の近くから離れた。

 いつまでも彼女に甘えていてはいけないのだ。きっと吹雪からの返信は来ないだろう。
 それでいい。


 「また、来ます。………必ず」


 周は振り返り、彼女がいる部屋のドアを見つめながらそう呟いた。
 もちろん、彼女からの返事などなかった。