22話「忘れたくない人」





   ★★★



 いつかはこうなってしまうのだろうと、わかっていた。
 それなのに、彼女の傍にいるのが心地よくて、甘えてしまっていたのだ。本当の事を言ってしまったらどう思われるのか。
 所詮は、彼女よりも年下で、まだまだ子どもの学生。余裕もないし、お金もない。ただ、夢を追いかけているだけの青臭い男だ。
 そんな時に吹雪に会った。それが周にとって大きな出会いだったのだ。

 恋愛など興味がなかった周だが、彼女だけがキラキラと輝いて見えたし、話してみたいと思った。そして、隣に居て欲しいとも思った。それなのに、本当に自分を見せるのが、まだ怖かったのだ。
 どんなに着飾っても、いつかはバレてしまうというのに。


 彼女の部屋の前で待ち始めて数時間。
 こんな事をしては迷惑なるのは、わかっていた。
 けれど、彼女の傷付いた表情を見てしまったら、何も出来ずに帰る事など出来るはずもなかった。自分が傷つけた。そんな事はわかっている。だからこそ、本当の気持ちを自分の思いを伝えなければいけないと思った。