21話「聞きたくない」




 頭が真っ白になって、自分が今どこを歩いているのかもわからなくなっていたが、今の吹雪にはそんな事はどうでもよかった。


 人混みに紛れながら、フラフラと歩く。先程までは春の心地いい温かを感じられ気分もよかったはずだ。けれど、今はその太陽の光さえもうっとおしく感じてしまう。
 今は誰もいない、そして、光のない部屋に戻りたかった。



 結局は、周も幼馴染みたちと同じだったのだろうか。
 彼も何か自分の目的を果たすために自分を選び近寄ってきたのだろうか。ホストのために関係を結んだのは、お互い合意の上だった。けれど、それ以外吹雪には内緒で考えていたことがあったのかもしれない。

 そんな事も知らずに、吹雪は周を好きになったのだ。
 やはり、彼の中ではただ利用出来る女の一人だったのだろう。

 あの温かいほどの優しさと温かい笑顔は全て作られたものだったのか。
 もしそうだとしたら、彼は最高のホストになれる。いや、もうホストそのものだと吹雪は思った。
 それ自体が嘘かもしれないが………。


 周を信じたい気持ちもあった。
 けれど、それ以上に彼から「嘘だったんだ」も言われてしまったならば、吹雪は立ち直れないと思った。だから、本当の気持ちを確認することなど出来なかった。