ピンポーンッ



 部屋に玄関の呼び鈴が響いた。
 吹雪は思わず体がビクッと震えてしまう。
 夜中という時間に、来客を知らせる音。もちろん、誰が来る予定もなかった。
 吹雪は、どうしていいのかわからずに、ベットの上で固まってしまった。

 けれど、寝てしまっていると思われればいいのではないか。
 こんな時間に誰かがこの部屋に来るはずもない。そう思って、呼び鈴を鳴らした相手が帰ってしまう事を期待した。

 一人暮らしをしていて、知らない誰かが訪ねてくる事はとても怖いのだ。
 吹雪は、震える体を自分の腕で抱きしめながら心の中で「帰りますように帰りますように………」と、呪文のように唱えた。

 すると、スマホがブブッと鳴った。
 その音にも驚いたが、表示されたメッセージを見た瞬間、吹雪はベットから立ち上がった。

 そして、駆け足で玄関に向かった。
 鍵を開けて、ドアを開く。


 「周くん………!」
 「あ、吹雪さーん。起きててくれたんだねー」


 そこに居たのは、頬を赤くして、目がとろんとしている周だった。


 「ただいま、かえりましたー!」
 「ちょっ………周くん!?」


 玄関先で、思いきり周に抱きしめられ、吹雪は体を硬直させてしまう。


 「吹雪さん、おかえりないはー?」
 「…………周くん、お願い離して!」
 「嫌ですよー」


 上機嫌な周だったけれど、強い力で抱きしめてくるので、吹雪は彼の腕の中でバタバタと暴れる事しか出来なかった。