15話「強引な添い寝」





   ☆☆☆



 そこまで話し終えると、吹雪はふーっと大きく息をついた。
 過去の話しのはずなのに、やはり思い出すだけで辛い気持ちになる。今まで引きずってきたのだから尚更だ。
 吹雪は、息を吐いた事で少しだけ落ち着きを取り戻すと、隣りで静かに話を聞いてくれていた周の方を見た。


 「ごめんね………楽しい話じゃないのに、聞いてくれてありがとう。………周くんに聞いてもらえて本当によかったよ」
 「…………」
 「あの………周くん?」


 周は何故かボーッとしたまま何かを考えるように前を向いたまま固まってしまっていた。
 吹雪は、彼の反応がないのが不安になってしまい、思わず彼の腕に触れながら周の名前を呼んだ。
 すると、周はこちらに視線を向けて、そのまま彼の腕の上にあった手を自分の手で包み、そのまま、また優しく抱きしめてくれる。
 また、彼のぬくもりが吹雪を支配する。何とも心地のよい瞬間だった。


 「………吹雪さん、話してくれて、ありがとう」
 「うん………」
 「俺が、俺は吹雪さんを傷つけたりしないよ………だから、信じて欲しい……」


 その言葉は吹雪を安心させようと言ったものだったかもしれない。けれど、吹雪には何故か周自身が強く言い聞かせているような、決意の言葉に聞こえた。
 けれど、吹雪にとってそれはどうでもいい事だった。周が自分の事をそうやって大切に思ってくれる事が嬉しかったのだ。
 出会い方は少し変わっていただったかもしれない。そして、関係も特殊かもしれない。こうやって傍に居てくれるだけで安心出来る、抱きしめてもらいたいと思える人に出会えたのだ。吹雪は、過去の思い出よりもその思いが今大きくなっていた。