「吹雪さん、ホストとしての俺に話しにくいなら、一人の男として話を聞かせてくれない?年下で頼りないかもしれない。けど、吹雪さんの役に立ちたいと思うのは、ホストの練習としてじゃないよ」
 「そう、なの?」
 「うん。吹雪さんは、ただ甘えさせてくれるだけの俺をこうやって風邪をひかないように温かい部屋に入れてくれた。とっても嬉しかった」
 「それは…………」
 「じゃあさ、こうやってお風呂貸してくれたり、ご飯作ってくれたお礼に、俺に吹雪さんの相談を聞いてあげよう!って、事でどう?」
 「…………ふふふ………何、それ」


 吹雪は周の香りに染まった自分の洋服を着た彼の胸に顔を埋めて微笑んだ。
 周が話しを聞きたかったはずなのに、何故か吹雪の相談事になっている。それが可笑しくて、吹雪は思わず笑ってしまった。

 けれど、その笑いで深く考えるのがバカらしくなってしまった。
 そんなに重たい話でもない。自分がずっと気にしている事にすぎないのだ。
 それにその悲しい思い出に気にする生活から抜け出したいと思っていたのだ。
 好きな人に話して、どう思われるか。
 また、同じ繰り返しかもしれない。それとも、「そんな事」と笑われるかもしれない。
 そんな不安もあるけれど、彼ならは大丈夫。そう思えるのだ。


 「………じゃあ、周くんに相談しちゃおうかな?」
 「うん。何でも聞くよ」
 「頼りしてします、周くん」


 そう言って、彼に抱きしめられながら、周を見上げると、何故か得意気な表情で「まかせて!」と言う周。そんな彼の笑顔を間近で見て、吹雪は微笑んだ。



 周の香り、体温に包まれているだけで安心する。「大丈夫だよ」と言われているようで、吹雪の心は次第に落ち着いてきたのだった。