周に話してしまいたい気持ちもある。
 けれど、それは「可愛そうな私」と思われるのではないか。そんな思いまでしてしまう。
 けれど、自分の事を深く知りたいと思ってくれる彼の気持ちも嬉しかった。
 周が自分の事を考えてくれ、心配してくれる。ただの練習台なのに、どうしてそこまでしてくれるのだろう?と、彼の気持ちに期待してしまっている自分もいた。


 そんな複雑な気持ちが混ざり合い、吹雪はどうしていいのか迷っていると、周はゆっくりと近づいてきた。
 痺れをきらして、洋服を着替えて帰ってしまうのだろうか。けれど、それも仕方がない。まだ、話しをする踏ん切りがつかないのだ。


 「ご、ごめんね。なかなか話せなくて……帰り傘使って…………ぇ………」


 吹雪が服を差し出した洋服には触れず、周はそのまま吹雪を抱きしめていた。
 突然の事に、吹雪は小さな声が出ただけで、言葉も彼に包まれてしまった。